「夏の土用」や「土用の丑の日」は有名ですが、実は土用は夏だけのものではないんです。 実は、四季それぞれに土用があることをご存知でしょうか? 今回は、あまり知られていない 四季それぞれの土用についてご紹介します。
土用とは?
土用とは、立春、立夏、立秋、立冬の直前の約18日間の期間を指します。それぞれ「春土用」「夏土用」「秋土用」「冬土用」と呼ばれています。土用は二十四節気とは異なり、雑節と呼ばれる季節の移り変わりを示す暦日の一つです。
雑節とは、二十四節気以外の季節の移り変わりを知るために設けられた暦日で、土用以外にも、彼岸や節分、八十八夜、入梅など、様々な雑節が存在します。
土用の起源は中国の「陰陽五行思想」に遡ります。この思想では、自然界は木・火・土・金・水の5つの要素から成り立っていると考えられています。季節もこの5つの要素に当てはめられ、春は木、夏は火、秋は金、冬は水の気とされました。そして、土は季節の変わり目である立春、立夏、立秋、立冬の直前の18日間に割り当てられました。この時期は土の気が盛んになるとされ、「土旺用事」と呼ばれました。これが「土用」の語源です。
体調を崩しやすい時期とされる土用は、養生を心掛けることが大切です。旬の食材やおすすめの食材を積極的に取り入れ、睡眠を十分に取るなど、心身の健康に気を配りましょう。
土の中にいるとされる神様
土用は、土の神様である「土公神(どくじん)」が土の中にいるとされる期間とされています。土公神は、陰陽道で土をつかさどる神様で、春は竈(かまど)、夏は門、秋は井戸、冬は庭にいるとされています。土用期間中に土を動かすと、土公神に怒らせてしまうと考えられていました。そのため、土いじり、草むしり、穴掘り、増改築など、土を動かすような行為は控えられていました。しかし、土公神が天上界に行く「間日(まび)」と呼ばれる日だけは、土を動かしても問題ないとされています。
四季それぞれの土用
春土用(4月17日頃~5月5日頃)立夏直前の18日間
春土用は、新しい生命が芽生える季節の変わり目です。寒さから解放され、万物の色鮮やかに咲き誇る陽気な時期ですが、同時に体調を崩しやすい時期でもあります。
春の土用は「戌」の日に、
「い」のつく食べ物・・・いちご、いわし、いくら、イカ、インゲン豆、芋など
白い食べ物・・・大根、しらす、豆腐、うどん、ご飯、お餅など を食べると良いと言われています。
夏土用(7月20日頃~8月7日頃)立秋直前の18日間
夏土用は、一年で最も暑く、日照時間が長い季節の変わり目です。暑さに負けず、体調管理に十分注意する必要があります。
夏の土用は「丑」の日に、
「う」のつく食べ物・・・うなぎ、瓜、梅干し、うどん、馬肉など
黒い食べ物・・・うなぎ、黒鯛、ドジョウ、シジミ、ナス、黒豆、黒砂糖、黒ゴマなど を食べると良いと言われています。
秋土用(10月20日頃~11月7日頃)立冬直前の18日間
秋土用は、暑さが和らぎ、過ごしやすい季節の変わり目です。芸術や読書など、心豊かな時間を過ごすのに最適な時期です。
秋の土用は「辰」の日に、
「た」のつく食べ物・・・玉ねぎ、タコ、大根など
青(緑)の食べ物・・・青魚(サンマ、サバ、イワシなど)を食べると良いと言われています。
冬土用(1月18日頃~2月4日頃)立春直前の18日間
冬土用は、一年で最も寒さが厳しい季節の変わり目です。寒さ対策をしっかりとして、体調を崩さないように注意しましょう。
冬の土用は「未」の日に、
「ひ」のつく食べ物・・・ひらめ、ヒラマサ、ひじきなど
赤い食べ物・・・トマト、パプリカ、いちごなど を食べると良いと言われています。
土用の時期に「してはいけない」こと
土用期間中に「やってはいけないこと」とされることがあるのをご存知でしょうか?
昔は縁起を担いで土用の期間は禁じられていたことがありますので、代表的なことをご紹介します。
1. 土を動かすこと
土用期間中は、土の神様である「土公神(どくじん)」が土の中にいるとされると考えられていたため、「土動かし」と呼ばれる土いじり、草むしり、畑やガーデニング、造園、地鎮祭、引越し、井戸掘りなどを控えるべきとされていました。
2. 新しいこと・場所を移動すること
土用はそれぞれの季節の変わり目にあたり、体調を崩しやすく、気持ちも不安定になりやすい時期です。そのため、転職、就職、結婚、結納、開業、開店、新居購入など、新しいことを始めたり、引っ越しや旅行などの移動を控えたほうがよいとされてきました。
今ではあまり意識することが少なくなってしまいましたが、昔ながらの風習を参考に、心身を休める時間を設けてみてはいかがでしょうか。